[未来帰還-Back to thefuture in 1999-]
第二章 氷面鏡 前編
CAST 番号 セリフ 効果・情景
■scene01
■食堂
由紀夫と悠里、二人で部首遊びをしている。
悠里 001 SE:鉛筆で文字を書く音
由紀夫 002 SE:鉛筆で文字を書く音
悠里 003 SE:鉛筆で文字を書く音
由紀夫 004 SE:鉛筆で文字を書く音
悠里 005 あ、由紀夫、芝は二回目だよ。  
由紀夫 006 そうだっけ?  
悠里 007 こっちの紙に書いてある。 SE:紙の音
由紀夫 008 あ〜ほんとだ…。  
悠里 009 やった〜!僕の勝ちっと。これで三勝三敗か〜。  
由紀夫 010 草冠は結構いい勝負だったね。  
悠里 011 漢字は自信あったんだけど、由紀夫が思ったより強くて苦戦したよ。  
由紀夫 012 部首遊びは直実とよくやってるからね、簡単には負けないよ♪  
悠里 013 あ〜あ、外は吹雪ででらんないし、和幸は熱出すし…。  
由紀夫 014 直実は和幸につきっきりだし…つまんないね。  
悠里 015 (面白がって)ねぇ、由紀夫はさ、なんで直実が好きなの?  
由紀夫 016 べ、別に…  
悠里 017 (打ち消し)隠しても無駄だよ。  
由紀夫 018 そんな、突然言われても…。  
悠里 019 教えてよ、好きな理由  
由紀夫 020 理由なんて!…ないよ、気付いたら好きだったし。  
悠里 021 直実が和幸を好きでも?  
由紀夫 022 知ってるさ。直実がどれだけ和幸の事を思ってるか、そんな事とうの昔から気づいてたよ!  
悠里 023 和幸は気付いてないみたいだけどね  
由紀夫 024 いいんだよ、一生気付かなければ。直実もそう望んでる  
悠里 025 僕もさ、由紀夫、思うんだ。好きになるのに理由なんてない。人はね、皆が皆狂いを持って生まれるんだ。誰に教わるでもなく誰かを好きになって、足りないモノを補うかのように、足らないモノを与えるかのように夢中になっていって。 SE:悠里が椅子を引き立ち上がる音
SE:歩く音
悠里 026 報われない恋は、好きになればなるほど、苦しみの連鎖が続く。 SE:紙に鉛筆でぐるぐる円を書く
由紀夫 027 でも、それでも、好きなんだ。  
悠里 028 それって一種の拷問だよね。  
■scene02
■直実のモノローグ
直実M 029 手を伸ばせば触れる事は出来ても、和幸の気持ちを掴む事は永遠に出来ないだろう。最初からわかっていた事だから、覚悟は出来ていた。平行線のままでも俺達の関係がこのまま変わらなければ、それでよかった。和幸の心を開こうなんて、俺は望んでいなかった。 BGMin
ナレ 030 ボイスドラマ 未来帰還 Back to the future in 1999  
由紀夫TC 031 第二章 氷面鏡(ひもかがみ)  
■scene03
■和幸と直実の部屋
和幸が眠っている、直実が隣で椅子に座って様子を見ている。
直実 032 (ため息)(つぶやく)最近、無茶させすぎたかな…  
和幸 033 ゆう・ SE:直実、立ち上がる音、歩く音。
SE:ドアの開く音。
直実 034 ん?  
和幸 035 (魘されている)ゆう…やめ…っぅう…はぁ…  
直実 036 和幸? SE:歩く音、直実近寄る
和幸 037 (魘されたまま)僕は…んっぅ…はぁはぁ…やめ…ろ  
直実 038 和幸!大丈夫か?  
和幸 039 (魘されたまま)はぁはぁ…いや…だ、ゆ…う…り!ちが…う…(大きく息を吐く)  
直実 040 おい、和幸…和幸!しっかりしろ! SE:衣擦れの音
和幸 041 (荒い息遣いでやっとの思いで喋る)なお…み…はぁはぁ  
直実 042 和幸、大丈夫か?ゆっくり呼吸して、浅く吸うな、一度深く吸って  
和幸 043 (息を深く吸う)  
直実 044 はいて  
和幸 045 (息を大きく吐く)  
直実 046 起き上がれるか?  
和幸 047 うん… SE:衣擦れの音
直実 048 水、飲んで、はい SE:直実立ち上がり歩く音
和幸 049 ありがとう  
直実 050 うなされて、悠里の名前を呼んでた。よっぽど嫌いなんだな。  
和幸 051 いや…違う…  
直実 052 あんなに苦しそうだったのに?  
和幸 053 どんな夢だったかよく覚えてないけど、僕は悠里が嫌いじゃない  
直実 054 ふ〜ん…  
和幸 055 逆に、悠里が羨ましい  
直実 056 うらやま…しい?  
和幸 057 ああ。自分勝手で、自分の言いたい事を言って、滅茶苦茶な奴だけど、僕には真似できない。  
直実 058 和幸はあんな風になりたいの?  
和幸 059 ううん、あんな風にはなれない…ならないよ。僕には無理だ。  
直実 060 そうであってほしいね、あんなのが2人になったら俺の体がもたないよ。  
和幸 061 (ため息)どんな夢を見てたか…思い出せないけど…。でも、悲しい夢だった気がするよ。  
直実 062 酷くうなされていたからね、あんな風に苦しんでる姿は見てる方も辛い。  
和幸 063 ごめん、直実。  
直実 064 謝る必要なんてないさ(SE:近づく音)額、触らせて。 SE:近づく音
和幸 065 うん…。  
直実 066 まだ熱が高いな。今夜も薬を飲もう。  
和幸 067 そうか、熱のせいか…。頬は熱いけど、体中すごく…すごく寒いんだ。  
直実 068 ただの風邪さ…じきによくなるよ。  
■scene04
■食堂、直実、由紀夫、悠里の3人の夕食
由紀夫 069 和幸は夕食、食べなくていいの? SE:食器の音
直実 070 薬が効いてよく眠ってる。  
悠里 071 眠り薬?  
直実 072 風邪薬だよ。  
由紀夫 073 ごちそうさま  
悠里 074 ごちそうさま! SE:食器の音
直実 075 お粗末様  
由紀夫 076 直実、今日はお風呂沸かす?  
直実 077 今日はやめておこう、それより2Fの暖炉に火を入れようと思ってるんだ  
由紀夫 078 和幸の熱が下がらないから?  
直実 079 ああ。2Fの暖炉はずっと使ってなかったから、一度火を入れて暖かくすれば部屋の温度がだいぶ違うだろ。  
悠里 080 直実が人肌で温めてあげれば?  
直実 081 それもいい案だね、試してみようか?  
悠里 082 あはは(笑)  
由紀夫 083 悠里!  
直実 084 冗談だよ。二人とも、2Fに薪を運ぶから手伝って。  
悠里 085 は〜い、行こう、由紀夫  
由紀夫 086 悠里の馬鹿  
悠里 087 怒るなよぉ、冗談だろ。先行ってるよ。 SE:椅子を引く音
由紀夫 088 直実も、そんな風に言わなくたっていいのに。 SE:悠里立ち去る音
直実 089 冗談だよ、それくらい流せって。  
由紀夫 090 冗談だって、そんなの聞きたくない。  
直実 091 (ため息)大げさだな、由紀夫は。  
由紀夫 092 嫌なんだ…。僕のわがままだってわかってるけど、僕は、僕の気持ちは…  
悠里 093 (遠くから)おーい、二人ともーまだ〜?  
直実 094 行こう由紀夫、悠里が呼んでる  
由紀夫 095 …わかったよ…。  
■scene5
■和幸と直実の部屋
和幸が寝ている
和幸 096 何の本を探してるの? SE:ドアがガチャリと開く音
SE:歩く音
SE:本をめくる音、本を閉じる音、本をめくる音
悠里 097 起きてたのか、寝てると思ったのに  
和幸 098 人の部屋に無断で入るなんて失礼だよ、悠里  
悠里 099 君が寝てると思ったからコッソリ入ったんだけど、悪かったね  
和幸 100 お気遣いありがとう、出てってくれ  
悠里 101 機嫌が悪いなぁ、起こしたのが直実じゃないから怒っちゃった?  
和幸 102 なんだよその言い方  
悠里 103 だってそうだろ、君みたいなおひめ様を扱えるのは直実ぐらいみたいだし  
和幸 104 僕は…姫なんかじゃない  
悠里 105 まぁいいけど、ここは、外国の本もたくさん残ってるって聞いて楽しみにしてたんだ  
和幸 106 本ならこの部屋じゃなく家族室の方にたくさんあるよ  
悠里 107 どうしてそんなに僕を追い出したいの?  
和幸 108 …いや……  
悠里 109 僕の事、嫌い?  
和幸 110 ……嫌い、ではないけど  
悠里 111 じゃあもう少し話をしようよ  
和幸 112 あまり、人と接するのは得意じゃないんだ、普通に話すことぐらいは出来るけど、深くかわりたくない  
悠里 113 直実なら平気なのに?  
和幸 114 直実は……特別だけど、それでもやっぱり直実でも…いや、直実の方が気を遣っていつも僕と距離をとって付き合ってくれている  
悠里 115 じゃあ僕みたいにズカズカ入り込んでくる奴は、苦手なんだろうね  
和幸 116 正直に言うと、今まで君みたいな奴はずっと避けてきた SE:悠里歩く音
悠里 117 隣に座っていい?  
和幸 118 ………いいよ SE:悠里ベッドに腰を下ろす音
悠里 119 ねえ和幸、これから日本はどうなると思う?  
和幸 120 さあ…、大東亜戦争に勝つんじゃないかな?  
悠里 121 本気でそう思ってるの?食べ物も着る物も、生活していくのに必要なものがこんなに足りなくなってるのに?  
和幸 122 何が言いたいの?  
悠里 123 …僕はもうすぐ日本は崩壊すると思う  
和幸 124 そんな事言っちゃ…でも……それも…いいかもね  
悠里 125 あはは、正直だね、君はお父さんの仕事を継ぐのが嫌なんだろ?  
和幸 126 仕事というよりも、父の言いなりになるのが嫌なんだ  
悠里 127 じゃあ言いなりにならなきゃいい  
和幸 128 勝手な事言うなよ、何も知らないくせに  
悠里 129 何も知らないから言うのさ、僕は君じゃないからね  
和幸 130 ……僕は……僕は怖いんだ  
悠里 131 何にそんなに怯えているの? SE:鈴の転がる音
和幸 132 …あ…その鈴…  
悠里 133 ああ、これ?(SE:鈴の音)これ、母さんから貰ったんだ。君は気味悪がってるみたいだけど、母さんが再婚する前に僕にくれた大切なものなんだよ SE:鈴の音
和幸 134 再婚?  
悠里 135 ああ、僕はつい一ヶ月前まで武蔵って苗字だったんだ。父さんは僕が生まれてすぐ事故で死んで、僕はずっと母さんと二人暮らしだったんだよ。  
和幸 136 …そうなんだ… BGMin
悠里 137 母さんは学校の先生で、豊かな暮らしではなかったけど、つつましく穏やかに暮してた。そこへ今の父親がやってきたんだ。  
和幸 138 新しいお父さん?  
悠里 139 母さんに一目惚れしたんだって。母さんもまんざらじゃなかったみたいで、二人は僕の事なんか目もくれず、あっという間に結婚してしまったんだ。  
悠里 140 母さんは僕を愛していた。けれど、新しい父さんに…陸奥の家から跡取りになる僕を、長門の別荘に預ける話を持ちかけられて………(ため息)陸奥の家はずっと跡取りが必要だったんだ。だから、僕は母さんの好きになった人の為に、母さんの為にここへ来る事にした。 SE:立ち上がり、歩く音
和幸 141 悠里…君は…  
悠里 142 いいんだよ、これで。僕は邪魔になったのさ(笑)  
和幸 143 そんな風に…  
悠里 144 ほら、そろそろ直実が戻ってくるよ。さっき由紀夫と二人で薪割りするって言ってたから、僕は気を利かせて逃げてきたんだけどね。  
和幸 145 気を利かせ…?  
悠里 146 ほんと君って鈍感だね。 SE:歩く音、窓を開ける音、風の音
悠里 147 そんな風に固く瞳を瞑っていたら星が見えないよ、この夜空を眺めることが出来ないよ  
■scene06
■由紀夫の部屋、由紀夫寝ている
由紀夫 148 ん…んん…(寝言みたいな感じで) SE:時計の振り子音
SE:衣擦れの音
由紀夫 149 …うんん… SE:水の音遠くで
SE:時計の音、ぼーんぼーんと2回
由紀夫 150 まだ2時…か…。 SE:遠くで水の音
由紀夫 151 あれ…なんの音だろ SE:遠くで水の音
由紀夫 152 直実…こんな時間に井戸で…(つぶやくように) SE:衣擦れの音、歩く音、窓を開ける音
由紀夫 153 まさか…水ごり…? SE:水の音
SE:窓を閉める音、歩く音、ドアの開閉音
■scene07
■井戸、直実が井戸の水を浴びて願掛けをしている
※このシーンは編集で距離感を少し工夫します。
※このシーンの直実は別人格みたいに怖い人でお願いします。
由紀夫 154 (外気の寒さを感じて)…寒い………こんな寒いのに…直実… BGMin
SE:ドアを開ける音、雪の上を歩く音
直実 155 かず…の…に……ません…ように…(囁くように SE:水の音かぶせて
直実 156 かずゆき…に…あかが…きません…ように SE:水の音、さっきよりも大きく
直実 157 和幸のもとに…赤紙が…きません…ように SE:水の音はっきり
(由紀夫は物陰から様子を見ている)
由紀夫 158 がん…かけ… SE:由紀夫がパキっと枯れ木を踏んでしまう音
直実 159 誰だ! SE:直実近寄る足音
由紀夫 160 あ…  
直実 161 …由紀夫(怖い声で) SE:北風