[ 記憶再生-Summer vacation of 1999- ]
最終話 再生
2009/1/30版
cast 番号 台詞・情景 効果 BGM
■scene01
■食堂
則夫が本を読んでいる。
和彦 001 則夫、読書中ごめん、直人を見かけなかった? 雨音
ページをめくる音
和彦の足音
ドアが開く音
 
則夫 002 知らない、夕食の後から見てないよ。シャワーじゃないの?    
和彦 003 うん、シャワー室には居なかった。    
則夫 004 僕は食事が終わった後からずっとここで本を読んでるけど、直人は来なかったよ。    
和彦 005 そっか。    
則夫 006 どうしたの?急ぎの用事?    
和彦 007 いや…急ぎじゃないけど…ただ、手紙を返してもらおうと思って。    
則夫 008 何の手紙?    
和彦 009 …悠が居なくなった日の夜、僕にくれた…最後の手紙だよ。    
和彦 010 直人が見せてくれって言うんで渡したんだけど、
やっぱり他人に貸すものじゃなかったって思い直して…。
   
則夫 011 和彦、その手紙は…最後の手紙じゃないよ。    
和彦 012 …え?    
則夫 013 あの晩、悠が手紙を書いていた時に、僕、一緒に居たんだ。    
和彦 014 それが、僕宛の手紙じゃ…    
則夫 015 悠は和彦宛に書いた後、もう一通手紙を書いてた。    
和彦 016 誰に?    
則夫 017 それも君にだよ。    
和彦 018 どういう事?    
則夫 019 もう一通も君宛だけど…君に読んで貰わなくてもいいんだって言ってて、
僕はその内容がずっと気になってたんだ。
   
和彦 020 その手紙は何処にあるの?    
則夫 021 薫が持ってる    
和彦 022 どうして?    
則夫 023 昨日図書準備室で偶然見つけて…
僕は薫にもその手紙を読んでもらいたいと思って…だから、薫に渡したんだ。
   
和彦 024 …僕へ宛てた手紙なら、僕も読みたい。    
則夫 025 和彦…    
和彦 026 悠の最後の言葉を、僕も知りたい。   記憶再生のテーマin
■scene02
■オープニング
N 027 閉ざされた世界を、壊したかったのか、壊されたかったのか    
N 028 ただ静かに微笑み、まっすぐに彼を見つめ続けていた、君の言葉を思い出す    
N 029 僕は、僕の卵を壊して羽ばたく、それから飛ぶ、彼に向かって    
N 030 ボイスドラマ 記憶再生 Summer vacation of 1999   記憶再生のテーマF.O.
薫TC 031 最終話 再生    
■scene03
■学院の玄関ホール直人と薫が居る
直人 032 悠が去年書いた小論文の事を思い出したよ。テーマは「再生」だったかな。 SE:雨の音  
直人 033 「生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。…鳥は神に向かって飛ぶ。」    
034 ヘッセのデミアン?    
直人 035 そう言ってたよ。    
036 …それが一体、悠と僕にどんな関係あるって言うの?    
直人 037 続きがあるんだ…「僕は、僕の卵を壊して羽ばたく、それから飛ぶ、彼に向かって」    
038 「僕は、僕の卵を壊して羽ばたく、それから飛ぶ、彼に向かって」    
直人 039 (直人の怖い部分です。静かな怖さを御願いします。)
5月の…肌寒い夜だったよ。悠が湖に飛び込んだのは…・。
(溜息を一つ下さい)俺はね、薫。
悠が死んだと聞いて、哀れむより先に喜んだんだ。
   
直人 040 生きていた頃の悠は、押しつけがましいほどの愛情で和彦の自由を奪っていた。
身勝手に愛して、いつも和彦の視線の先回りをして…
なんとか見つめて貰おうとうろつきまわっていたからね。
   
041 君は…和彦を独占したかったんだね。    
直人 042 (静かな怒り)ああ、そうさ。    
直人 043 だいたい…薫、おまえだって、もう気づいてるんだろ?    
044 何に…?    
直人 045 俺達だけじゃなく、おまえ自身も悠にとらわれてるって事にさ。    
046 …なに…言ってるの? 直人が薫に近づく足音  
直人 047 (薫に近づき)
薫、いやおまえは悠さ。
   
直人 048 悠として死に、薫になって現れたおまえは、和彦の心を捕まえる事に成功した。
おまえの恋の企みは見事に叶ったんだよ。
   
049 だから…僕は悠じゃない、薫だよ    
050 そうさ…僕は悠だよ。(薫の脳内)    
051 違う、僕は…    
直人 052 いい加減終わりにしないか、悠。    
直人 053 和彦だけじゃなく、薫の事だって!
もういい加減解放してやれよ。(静かな怒りをキープしています)
雨の音だんだん小さく
近づいてくる足音
 
和彦 054 直人!
(10mくらい離れた角から声をかける感じで)
   
和彦 055 薫も…ここで何してるの?    
056 かずひこ…(半泣き)    
和彦 057 薫…!どうしたの?(驚いて近寄る) 足音  
直人 058 (編集で気持ち間をおきます)
フフッ…(鼻で笑った後)あーあ、こんな時におまえが現れるとはね。(いっそすがすがしく)
   
和彦 059 …え?(驚いたまま)    
直人 060 俺にはツキもない。    
和彦 061 なお…と?    
直人 062 少し頭を冷やしてくる。理由は…薫に聞けよ、いや、悠に。(立ち去る) 立ち去る足音  
和彦 063 薫、一体何があったの?    
064 僕は…和彦、きっと僕は………悠なんだ    
和彦 065 どういう意味?(心配そうに) 雨の音F.O.  
066 僕はここに来てから、不思議な夢を何度か見た。    
和彦 067 どんな内容?    
068 君と僕の、僕の知らない思い出。多分これは…悠の記憶なんだと思う。    
和彦 069 ……っえ…
(半信半疑、驚いて見ています)
   
070 最初は僕も、ただの偶然や思いこみだと思ってた。
でも僕は…!君と居ると、ふっと何かを思い出したり、ひどく悲しい感情で一杯になる事があった。
   
071 いや、本当は周りからの影響で、自分は悠だと思いこんでしまっただけなのかもしれない。
僕は僕で、悠と僕は別人だし…それに…
   
和彦 072 それに?    
073 君は、悠が憎いんだろ?    
和彦 074 (溜息をつき)ああ、憎いよ。
…悠が居なくなったあの日から、僕はずっと悠の事ばかり考えてきた。
   
和彦 075 悠は何故僕を好きになったんだろう…
どうして僕を選んで、どうして湖に身を投げたんだろうって…。
何度も、何日も、ずっと考えさせられてきた。
   
和彦 076 僕は苦しかった……。憎くて…苦しくて……気になって…せつなくて    
077 かずひこ…    
和彦 078 だから嫌だったんだ、誰かを好きになるのは…
(せつなそうに)
   
079 ねぇ和彦…君が好きなのは、悠…なの?    
和彦 080 ……僕が好きなのは君だよ、薫。
僕は君が好きになったんだ。
(泣いてはいませんが心の中で泣いてるニュアンスで)
   
081 …和彦…    
和彦 082 僕は誰かを好きになる事なんてなかった。
誰も愛した事が無かったから、僕はその出来事に幼くて、愛される事におびえていた。
   
和彦 083 僕は悠を拒み、その為に悠は死んだ。
だけど僕は君を見つめて悠の気持ちを知り、悠を通して君に近づいていった。
そして君を好きになったんだ。
   
084 …うん……うん。(最初は呟くように、二回目は自分自身に言い聞かせるように) 和彦が近寄る足音  
和彦 085 …ずっと君に、触れたいと思ってた…
(薫を抱きしめてせつなく呟いています)
和彦が薫を抱きしめる衣擦れ音  
086 僕も、君に触れて、君の声をもっと聞きたいと思ってた…
(和彦を抱きしめ、呟いています)
   
087 もっと…触れてもいい?    
和彦 088 いいよ…キスして。    
和彦 089 …ん……んん…(キス、んん…の後吐息を一つ下さい) 衣擦れの音  
090 ふふ、やわらかい    
和彦 091 え?(ささやくように御願いします)    
092 和彦の唇。    
和彦 093 …馬鹿。(赤面)    
094 ふふふ…和彦…。    
和彦 095 なに?(優しく甘く御願いします)    
096 僕は…悠に教えてあげたい。 衣擦れの音
立ち上がり、歩く音
 
和彦 097 何を?    
098 君が悠を愛していた事、そして僕を受け入れてくれた事。    
和彦 099 ああ。(うなづき)    
100 雨、やんだね。(薫、窓を開ける) 窓を開ける音  
和彦 101 ほんとだ…月が見える。(和彦も窓辺に近寄る) 和彦も窓に近寄る足音  
102 うん    
和彦 103 薫、ありがとう。    
104 僕は何もしてないよ。    
和彦 105 いや、君のおかげで僕は、自分の気持ちと向き合う事が出来たんだ。    
106 …それは僕じゃなくて、悠のおかげだよ。    
■scene04
■則夫のモノローグ
則夫M 107 僕達はちゃんとわかっていた。    
則夫M 108 大人でもなく、子供でもない、この少年としての時が決して永遠ではないという事を。    
則夫M 109 でも悠は和彦の中で生きていく永遠を選んだ。    
則夫M 110 そして悠が本当に望んだ事が何か、僕も薫も気づいていた。    
■scene05
和彦と直人の部屋
直人、一人で窓の外を見ている
直人 111 どうぞ 風の音、虫の声
ノックの音
 
和彦 112 ただいま ドアの開く音  
直人 113 …(溜息をつき)お帰り。    
和彦 114 入っていい?    
直人 115 ふふ…(苦笑)
自分の部屋なんだから遠慮なんかいらないさ
   
和彦 116 …うん(躊躇いがちに) ドアを閉める音、歩く音  
和彦 117 (少し間を取ります)
僕、先にシャワー入ってくる
(立ち上がり、引き出しを開けて鍵を取り出す、鈴の音が鳴る)
立ち上がる音
引き出しを開けて鍵を取り出す
鈴の音が鳴る
 
直人 118 和彦。    
和彦 119 ん?    
直人 120 さっきはいいタイミングで現れてくれて助かった。俺も正気を失ってた。    
和彦 121 いや…うん…(なんと言っていいかわからず、支度をしながら)    
直人 122 俺は、おまえが好きなんだ。(さらっと)    
和彦 123 …え    
直人 124 俺はずっとお前だけを見てきた。
こうして隣に居て、話を聞いたり、傷ついたり悩んだりする姿を見てきて、ずっとおまえを支えていきたいと思ってた。
   
直人 125 おまえは人と深く関わるのを嫌がっていたから、俺は一定の距離を保ちながら、
いつでもお前がベストでいられるよう努力していた。
   
直人 126 誰よりもそばにいたから…すぐに気づいたんだ。    
和彦 127 …何に…?    
直人 128 悠に心を奪われてるって事にさ。    
直人 129 (和彦に近寄り)
おまえを変えたのは薫一人じゃない、きっと悠なんだろうって俺はわかってた。
悠は…ずっと生きている。薫の中だけじゃなく、おまえの中でも。
和彦に近寄る足音  
和彦 130 ああ、確かに、悠の事を忘れた事は無かった…。    
直人 131 それでも俺は、おまえが好きなんだ、和彦。    
和彦 132 直人…    
直人 133 俺はおまえの隣に居られるだけでいい。    
直人 134 ただそれだけでいい、おまえが誰を好きでも、俺はおまえがいい。    
和彦 135 僕は…僕も君が好きだし感謝してるし、でも…    
直人 136 いいんだ、わかってる(前の台詞を遮り)、いや、困らすつもりじゃなくて…    
和彦 137 …うん    
直人 138 たとえおまえが誰を好きになっても……俺は変わらずおまえが好きなんだ。
それだけはわかって欲しい。
   
和彦 139 …うん…
…ありがとう…直人…僕は…。(後のノックが被ります)
   
則夫 140 (ドアの外からです)
和彦、直人、居る?
ノックの音  
直人 141 …(溜息をつき)ああ、どうぞ    
則夫 142 (ドアを開け)
ねぇ、薫が何処へ行ったか知らない?
ドアを開ける音  
和彦 143 部屋に戻ってるはずだけど…    
則夫 144 部屋には居なかった。
…実はさっき、シャワー室ですれ違った時にランタンの置いてある場所を聞かれて…。
   
直人 145 ランタン?    
則夫 146 僕、嫌な予感がするんだ、薫はもしかして悠みたいに居なくなってしまうんじゃないかって。    
和彦 147 そんなはずはない、だって僕は薫の事を…(鈴が転がり落ちる)…あ…鈴が… 鈴が転がる音鈍く。  
則夫 148 壊れ…ちゃった?留め金、外れてる…    
直人 149 (溜息)薫を捜しに行こう    
則夫 150 何処に?    
直人 151 決まってるだろ?薫が悠だとすれば、行く場所はただ一つ。    
和彦 152 (はっとして)悠が死んだ崖…!……っ(駆け出す息づかいを下さい) 和彦駆け出す音  
則夫 153 待って、和彦!    
直人 154 則夫、おまえは崖の下の湖に行ってボートを出せるようにしてろ    
則夫 155 どうして?    
直人 156 悠の時のように薫が湖に飛び込んだら、おまえが助けるんだ。    
則夫 157 そんな…!    
直人 158 俺は和彦を追いかけて一緒に崖へ行く、場合によっては俺も飛び込んで薫を助ける。    
則夫 159 直人…、御願い、無茶しないで。    
直人 160 わかってる。もうこれ以上、悠の思い通りにはさせない。    
■scene06
悠が死んだ崖
薫、一人で崖に立っている
161 …悠、きみの書いた最期の手紙を読んだよ。
だから僕はここに来たんだ。
きみが何を思って、何故この崖から湖に飛び込んだのか、僕にはよくわかる。
良かったね、悠。
和彦は君を愛してる。君が望んだ通り、会う事の出来ない君に恋焦れてる。
木々をそよぐ風の音
虫の声、足音
 
162 ここまではきっと君のシナリオ通りなんだろ?    
和彦 163 薫ーっ!(10mぐらい離れたとこから必死に呼びかける)    
164 和彦… 和彦が近寄る足音  
和彦 165 (軽く息をはずませ)
こんなところで、何してるんだ
   
166 悠と決着をつけにきたんだよ    
和彦 167 え?    
168 直人の言う通り、僕ももう終わりにするべきだと思う。    
和彦 169 終わりにって何を?    
170 和彦、君はもう繰り返さなくていい。
ここから湖に飛び込んで悠の傍へ行くのは僕だけ出十分なんだ。
   
和彦 171 …は?薫、言ってる意味がさっぱりわからないよ!
御願いだからちゃんと説明してくれ!
   
172 僕達はずっと、繰り返してきたんだ。    
和彦 173 なにを繰り返してきたの? ここから未来帰還3章後編の和幸の台詞69から音声をそのまま重ねます  
174 子供の時間だよ。    
悠里 175 和幸、一緒に死のうよ、子供の時間は一番素晴らしいんだから。
一緒に死んで、生まれ変わろうよ、子供にさ。
そして子供のまま、また死んで、死んだかずぶん、生まれ変わろうよ。
何度も繰り返して、未来へ帰る為に。
未来のデータを使うので収録の必要はありません  
和幸 176 いいよ…一緒に死ぬよ 未来のデータを使うので収録の必要はありません  
直実 177 やめろー!(回想ここまで、未来の音声C.O) 未来のデータを使うので収録の必要はありません  
178 ねぇ、和彦。
輪廻転生って信じる?
…僕達はいくつもの時間を超えて過去にも何度も出会い、僕は君を見つけ出して、僕達は恋をして。
そして僕は再び君に出会う為にここへ来たんだ。
   
179 …僕達はいくつもの時間を超えて過去にも何度も出会い、僕は君を見つけ出して、僕達は恋をして。    
和彦 180 それは、悠の意志?    
181 …多分ね。    
和彦 182 どうしてずっと…繰り返してきたの?僕が…悠をふったから?    
183 …どうだろう…。
でも、僕にはわかるんだ。このまままた君を巻き込んでしまえば、君と僕は、いや直人も則夫もずっと離れられない運命のままだって。
   
184 僕はね和彦…君が好きなんだ。
君を見ていると胸が痛くて、君に触れたくて…この想いは悠の意志なんかじゃない。
これは僕自身の想い、僕だけの恋なんだ。
だから僕は悠の望む運命に抵抗しようと思う。
   
和彦 185 抵抗って?    
186 君を悠から解放してあげるよ。    
187 僕は悠の気持ちがわかるんだ、すごく、可哀想な奴だよ。
悠は君が一緒に来る事を望んでると思うけど…。
   
和彦 188 薫…待って、もう一度説明してくれ、どうすればいいんだ?僕が出来る事ならなんでも手伝うよ!    
189 悠の傍に僕が一人で行けば、もう繰り返されない、誰も辛い思いをしない。    
和彦 190 薫?    
191 悠と言う名前の少年が居た事、そしてその少年が君に伝えたかった事は「人を愛する事を恐れないで」という事。時々でいいんだ、思い出してくれれば、それだけで。    
和彦 192 悠…?    
193 君に会えてよかった、それは悠に感謝してるよ。ありがとう…さよなら。
(ドンと和彦を押しのけて飛び込む)
ドンと和彦を押しのけて
薫が崖へ飛び込む音
 
和彦 194 薫っ!(驚き息をのむ感じの方で。)    
直人 195 かずひこーっ(10mぐらい離れたところから呼びかける)    
和彦 196 直人、大変だ、薫が湖に飛び込んで…!(慌てています) 直人の足音近づく  
直人 197 落ち着いて、大丈夫だ、湖の下で則夫がボートを出せるようにして待ってる    
和彦 198 だって、間に合わなかったら!悠の時のように、二度と会えなくなってしまったら!
(ぱにくってます。)
   
直人 199 急ごう、急いで則夫のところへ行くんだ(せかしています)    
和彦 200 いやだ…僕は…僕は薫まで失いたくない!    
直人 201 和彦!いい加減にしろっ    
和彦 202 (前台詞にかぶせます)僕はここから飛び込んで、薫を助けに行く!    
直人 203 は?!    
和彦 204 大丈夫、直人、僕を信じて。僕は死なない…。絶対に帰ってくる(強く言い切る)    
直人 205 やめろ和彦! 和彦が駆け出す音  
直人 206 …まてっおい!…!和彦っ!和彦ーーっ!!! 和彦飛び込む音
風の音
 
直人 207 違う…俺が望んでいたのは、こんな結末じゃない…! 直人も走り出し、飛び込む音
風の音、虫の声
 
■scene07
■則夫のモノローグ
則夫M 208 僕はボートを必死にこいで、直人と和彦と薫の元へ急いだ。    
則夫M 209 すぐにみんなを見つける事が出来て、直人と和彦は意識がしっかりしていたけれど…
薫は目を閉じたまま、静かに呼吸しているだけだった。
   
則夫M 210 薫はきっと目を覚ましてくれるはず。    
則夫M 211 そう信じて、僕は夜通し、彼の傍で祈り続けた。    
■scene08
深海(和彦の夢)悠との別れ
212 和彦 水音  
和彦 213 悠、会いたかった。    
214 僕も会いたかったよ…でももうこれが、最期かな。    
和彦 215 …え?(不安に)    
216 僕の望みは叶ったんだ。    
和彦 217 君の…望みって?    
218 僕は君に知ってほしかった。誰かを愛する気持ちを、愛される事のすばらしさを。    
和彦 219 そうだ…僕は…(思いだし)    
220 君とは何度も未来と過去を…子供の時間を繰り返してきたけれど、君の魂は少しずつ変わってきた。    
和彦 221 僕の…魂が?    
222 うん、だから僕はここでお別れしようと思う。    
和彦 223 待って、悠、僕は君が好きなんだ。    
224 僕の役目は終わったんだ。薫にも、お礼を言いたい。    
和彦 225 悠…いやだ、僕は君と一緒だったらずっと、何度だって生まれ変わって一緒に居たい。    
226 ありがとう、和彦。    
和彦 227 悠、待ってくれ、悠!    
228 忘れないで、誰かを愛する事恐れないで…君を愛してる。    
和彦 229 ぼくも、僕も悠を…!    
<<ここから現実>>        
和彦 230 悠!    
直人 231 和彦!    
則夫 232 和彦、大丈夫?    
和彦 233 直人、則夫…(はっとして)    
則夫 234 目が覚めた?夕べ寮に戻ってから、和彦倒れちゃって、ずっと眠ってて…。    
和彦 235 (前の台詞にかぶせて)薫は?    
則夫 236 ほら隣、(微笑み)直人のベッドで寝てる。    
和彦 237 よかった、みんな無事だったんだ…。    
直人 238 (あきれて溜息をつき)
まさかおまえまで飛び込むと思わなかったよ。
則夫が機転を利かせてボートを湖に出しておいてくれたおかげで、俺達は助かったんだ。
   
和彦 239 そうか………則夫、ありがとう。    
則夫 240 ううん、これで薫が目を覚ましてさえくれれば、一安心なんだけどね。    
和彦 241 あれから一度も目を覚ましてないの?    
則夫 242 うん…。    
直人 243 呼吸も安定してるし、大丈夫だとは思うんだけど…    
和彦 244 薫…(薫の傍に近寄る) 起き上がり、薫の傍に近寄る音  
則夫 245 かずひこ…    
和彦 246 薫、御願い、目を覚まして。
僕は、悠の夢を見た、悠は君にもお礼を言いたいって言っていた。
衣擦れの音  
247 ん…んん…    
直人 248 薫…!    
則夫 249 薫!    
250 ん…ここは…    
和彦 251 薫…よかった(抱きしめる) 衣擦れの音  
252 …え…君は、誰?(きょとんとして)    
則夫 253 …え?    
和彦 254 かお…る?    
255 …どうして僕の名前を知ってるの…?    
直人 256 まさか、記憶が…?    
■scene09
■則夫のモノローグ
則夫M 257 薫は転入してきた日の朝から、記憶をすっぽり失っていた。    
則夫M 258 僕達の事も、悠のことも、何も知らない。まっさらな記憶で、僕達の前に居た。    
則夫M 259 こうして新しい関係になった僕達4人の夏休みは、もうすぐ…終わりを迎えようとしていた。    
■scene10
新しい4人
花壇にホースで水まきをしている和彦、手伝う薫
和彦 260 薫ー、いいよ。    
261 はーい。 ホースから勢いよく水が出る音  
和彦 262 あ、出た出た。    
263 バケツはいらないのー?    
和彦 264 うーん、大丈夫(ホースを持ったまま薫の方を向く)    
265 わ!つめたっ!和彦、何やってんだよ。 ↓ここから台詞小さくなります  
和彦 266 あ、ごめんごめん。    
267 ホース持ったままこっち向いたら、僕に水がかかるに決まってるだろー!?    
和彦 268 ははは、ほんとだね、ごめんよ薫。    
269 じゃー、お返ししちゃおっかな〜!それっ!(バケツの水を和彦にかけます) 水ぶっかけ音  
和彦 270 わっ!つめたっ!(不意打ちに驚きます)    
271 ははは!あははは。 ばちゃばちゃ  
和彦 272 ぷっはははは、ははははは。    
直人 273 (食堂の窓から則夫と直人が二人の様子を見ている。)
フフ(目を細めて笑っています)
   
則夫 274 和彦と薫を見てるの?    
直人 275 ああ、花壇に水まきをしてるんだけど、二人ともびちゃびちゃだな。    
則夫 276 あー、ほんとだ…ははは。    
則夫 277 (微笑みながら静かに)
まるで何も無かったみたいだね。
   
直人 278 ああ、薫は少なくともそうだろ、記憶が無いんだし。    
則夫 279 直人は、これでいいの?    
直人 280 これでって?    
則夫 281 このまま、薫と和彦が仲良くなって平気なの?(まっすぐな質問です)    
直人 282 平気じゃないさ。でも、今こうして和彦のそばに居られるだけで俺は幸せだよ。    
則夫 283 直人…    
直人 284 悠は俺達の中で永遠に生きていく事を望んだ。    
直人 285 俺達はこうして共に生きて、支え合って、手を取り合って生きていけるんだ。    
則夫 286 うん    
直人 287 ”少年としての限られた時間を、和彦と過ごすこと”それがどれだけ幸せな事か…。
俺はわかってるから、だから俺は少しでも和彦の傍に居たい。
   
則夫 288 …そうだね。…僕も、そうだよ。    
則夫 289 いつか大人になって、みんな遠く離れて、ばらばらになった時
…きっと僕は今のこの時間に思いを馳せるんだと思う。
   
直人 290 ああ…そうだな。
きっと思い出すんだろうな。
   
和彦 291 薫、シャツがびしょ濡れだよ、寒くない?    
292 平気だよ、夏だし、全然。暑い位だよ(笑いながら)    
和彦 293 そっか、ならよかった(微笑みながら)    
294 和彦は…どうしていつもそんなに僕の事気にしてくれるの?    
和彦 295 君の事が好きだから。    
296 …え?    
和彦 297 少し前まで、悠と言う名の少年が居て、僕は彼から大事な事を教えてもらったんだ。    
和彦 298 今度は僕が、君にその想いを伝えたい。    
299 僕に?    
和彦 300 ああ、透明で、静かで、決して消えない…
君を想う、僕の気持ちを。
   
ナレ 301 [ 記憶再生-Summer vacation of 1999- ]    
ナレ 302 企画 Spiral Spirit(すぱいらるすぴりっと)    
ナレ 303 脚本・編集 武田恵瑠々(たけだえるる)    
ナレ 304 キャラクターデザイン・イラスト w(ワラ)    
ナレ 305 音楽・編集サポート・主題歌アレンジ すさきふみお    
ナレ 306 御題協力 モニカ    
ナレ 307 主題歌作曲 芸竜作(げいりゅうさく)    
ナレ 308 主題歌歌唱 樹透音    
ナレ 309 主題歌アディショナルヴォイス とうざきみつき    
和彦 310 長門和彦 來香滄    
直人 311 霧島直人 織山カヨ    
則夫 312 榛名則夫 空木さくら    
悠・薫 313 悠、陸奥薫 武田恵瑠々    
ナレ 314 ナレーション ヨッシ〜・バラン