[ 記憶再生-Summer vacation of 1999- ] | ||||
第三話 追慕 | ||||
2009/1/21版 | ||||
cast | 番号 | 台詞・情景 | 効果 | BGM |
■scene01 ■朝の食堂、4人で食事をしている |
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■朝の食堂 | ||||
則夫 | 001 | ごちそうさま(箸を置く) | 朝の環境音、鳥の声、食事中音 | |
薫 | 002 | あれ、もう食べないの? | ||
則夫 | 003 | うん、あんまり食欲が無くて…。薫、足りないんだったら食べていいよ。 | ||
薫 | 004 | え?ほんと?じゃあ遠慮無く、いっただきま〜…す | ||
直人 | 005 | (薫の台詞にかぶせます) ごちそうさま。(席を立ち食器を下げにキッチンへ向かう) |
席を立ち食器を下げに キッチンへ向かう音 |
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則夫 | 006 | 僕、今日の午前中は図書室で小論文の資料探してるね。 (席を立ち食器を下げにキッチンへ向かう) |
席を立ち食器を下げに キッチンへ向かう音 |
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和彦 | 007 | うん、わかった。 | ||
直人 | 008 | 悪いけど俺も科学室で課題の資料整理してくるから、午前中は席を外すよ。 | 食堂に戻る足音 | |
和彦 | 009 | あ…ああ、うん。 | ||
直人 | 010 | じゃあ、お先に。 | 歩く音、食堂のドアが開き 締まる音 |
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薫 | 011 | いってらっしゃ〜い。 | ||
則夫 | 012 | 僕も、もう行くね。 | 歩く音、食堂のドアが開き 締まる音 |
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和彦 | 013 | うん、行ってらっしゃい。(二人いなくなる) | ||
薫 | 014 | …もぐもぐ…何かあったのかな。 | ||
和彦 | 015 | 何かって? | ||
薫 | 016 | 直人と則夫。今朝から一度も口をきいてないし、目も合わせようとしてない。 | ||
和彦 | 017 | そうだった?ごめん、気づかなかった…。 | ||
和彦 | 018 | 直人は夕べも変わりはなかったよ。 | ||
薫 | 019 | まぁ…もぐもぐ…直人はね、和彦の前でそういうの見せないはずだから。(食べながら話す) | 食器の音 | |
和彦 | 020 | どうして? | ||
薫 | 021 | だって…うーん…ごくん。直人にとって和彦は特別な人みたいだし。 | ||
和彦 | 022 | 特別って、どういう意味? | ||
薫 | 023 | 直人が言ってたんだ、和彦は特別って。 あと、これはあくまで僕の推測だけど、則夫は直人の事が好きなんじゃない? |
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和彦 | 024 | え?…好きって? | ||
薫 | 025 | いや、だから推測だけで本当にどうかはわからないよ。 | ||
和彦 | 026 | (間を入れます)(溜息をひとつついてから)…薫、もうやめないか。 | ||
薫 | 027 | 何が? | ||
和彦 | 028 | 関係ない僕等が余計な詮索をするのは失礼だと思う。 | ||
薫 | 029 | ここで4人で生活している以上、関係あるよ。 | ||
和彦 | 030 | だからって僕等が干渉すべき事じゃない。 | ||
薫 | 031 | (溜息)少なくとも君は直人と同室だろ、直人の事が心配じゃないの? | ||
和彦 | 032 | 心配…だよ…でも直人は僕よりしっかりしてるし、冷静に考える事ができるタイプだから… | ||
薫 | 033 | ならほっとけばいいやって考え方なんだ。 | ||
和彦 | 034 | そうじゃない、ただ僕は…必要以上に、人と深い関係になるのが苦手で…。 | ||
薫 | 035 | なにそれ。 | ||
和彦 | 036 | ………昔から、そうなんだ。 僕を慕ってくれる友人はたくさんいるけど、僕は他人とあまり深く付き合いたいとは思わない。 |
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和彦 | 037 | 直人とだってかなり親しい方だと思うけど、それでも僕は… 僕の本当の気持ちを見せたくないし、見せるつもりもない。 |
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薫 | 038 | どうして? | ||
和彦 | 039 | …君に……答える義務はないだろ。 | ||
薫 | 040 | 友達になってくれるんじゃなかったの? | ||
和彦 | 041 | 友達だからってなんでも話せるつきあいは、僕には無理なんだ。 | ||
薫 | 042 | 僕は君と何でも話せるようになりたい。 | ||
和彦 | 043 | 薫! | ||
薫 | 044 | 僕は悠って子がどうして君を好きになったのか、わかる気がするよ。 | ||
和彦 | 045 | 君は悠と何も関係ないだろ。 | ||
薫 | 046 | 関係なんてどうでもいい。 ねぇ和彦、君はそうやってこのまま何も受け入れない気でいるの? 君を取り巻く全てを拒んで…相手の気持ちに知らんぷりしたまま、ずっとそれで平気なの? |
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和彦 | 047 | 平気…だよ………ああ、平気だ。(自分に言い聞かせるように) だって僕はずっとそうやって生きてきたんだ! 自分だけを相手に…なんとかやってきた。だからこれからだって… |
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悠(悠里) | 048 | (前台詞にかぶせます)和彦、君は寂しくないの?たった一人で生きてきて… (和彦の脳内回想台詞です) |
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和彦 | 049 | …悠…(呟くように) | ||
薫 | 050 | 僕はイヤだよ…!君がそんな寂しい生き方をしてるなんて。 | ||
和彦 | 051 | (悠と同じ事を言う驚いて息をのみ)…薫(驚いて)君は一体…。 | ||
■scene02 ■オープニング |
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ナレ | 052 | あの時、最低だと 二度と近づくなとそう言われたならどんなに救われただろう | 記憶再生のテーマin | |
ナレ | 053 | 結局 全てを失ってもそれでもきみだけは 失えない | ||
ナレ | 054 | 永遠に辿りつけない 終わり。…終わりの始まり | ||
ナレ | 055 | ボイスドラマ 記憶再生 Summer vacation of 1999 | ||
和彦TC | 056 | 第三話 追慕 | ||
■scene03 ■夜、和彦と直人の部屋 |
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直人 | 057 | はい、ど〜ぞ。 | 虫の声ページをめくる音、 鉛筆で文字を書く音ノックの音 |
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和彦 | 058 | ただいま | ||
直人 | 059 | お帰り、和彦。(和彦の顔は見ないで文字を書きながら答えている) | ドアが開き締まる音 | |
和彦 | 060 | シャワー室の鍵、渡しとくね。 | 歩く音、机の上に鍵を置く音 | |
直人 | 061 | ああ、サンキュ、もうみんな入ったんだろ?(このときはちゃんと顔を見ている) | ||
和彦 | 062 | いや、薫がまだだと思うけど、台所の後片付けをしてるから最後でいいって…。 | ||
直人 | 063 | そうか、じゃあこれが一段落したら俺も行ってくるよ。 | ||
和彦 | 064 | それ、去年の小論文の資料? | ||
直人 | 065 | ああ、則夫が参考文献探してるから、アドバイスしようと思って、読み返してるんだ。 | ||
和彦 | 066 | (感心した息づかいのようなものをまぜて)はぁ〜直人は…優しいね。 | ||
直人 | 067 | 別に、去年やった内容だから大した手間じゃないしな。 | ||
和彦 | 068 | 大した手間だよ。 | ||
直人 | 069 | たまたま興味のある分野だからやってるだけだって。 苦手な内容だったら俺だってやらないさ(微笑みながら) |
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和彦 | 070 | それでも僕は誰かの為にそこまでしようと思わない…。 | ||
直人 | 071 | どうしたの?今日はやけに絡んできて。(にやにや) | ||
和彦 | 072 | はぁ〜(溜息)…薫の影響かも。 | ||
直人 | 073 | へぇー。(鉛筆を止めて) どんな? |
鉛筆の音止まる | |
和彦 | 074 | 彼、悠と同じ事を言ってくるんだ、怖い位、同じ事を…。 | ||
和彦 | 075 | (ベッドに体を投げ出し) なんだか見透かされてるようでイライラして…そのせいですごく… |
ベッドに体を投げ出す音 | |
直人 | 076 | すごく? | ||
和彦 | 077 | 熱くなる………うまく言えないけど、感情的になってしまう。 | ||
直人 | 078 | フフ(鼻で笑い)俺は感情的な和彦も、嫌いじゃないよ。 | ||
和彦 | 079 | 直人、ふざけないでくれ。 | ||
直人 | 080 | フ〜(溜息をつき) 確かに…薫が転入してきてから、俺達はペースを乱されてるな。 |
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和彦 | 081 | 僕自身は…変わりたくないし、変わる必要も無いと思ってるんだ。 | ||
直人 | 082 | じゃあ変わらなきゃいい。 | ||
和彦 | 083 | でもっ…薫と居ると……彼と話してると…僕にもわからない感情が…(あせりのような葛藤) | ||
直人 | 084 | だから言ったろ、薫に深入りするなって。 | ||
和彦 | 085 | わかってる、でもあいつは悠じゃない。 僕は…僕はきっと…悠じゃなく… 薫が…………気になるんだ。 |
直人が立ち上がり、和彦の 寝ころんでいるベッドに 近寄る足音 |
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直人 | 086 | 和彦 (和彦の上にのしかかって、顔をのぞき込んですぐ近くで言っています) |
衣擦れの音 | |
和彦 | 087 | …なに? | ||
直人 | 088 | もう一度、忠告しておく。 | ||
直人 | 089 | これ以上傷つきたくないんだったら、必要以上に薫に近づくな。 | ||
和彦 | 090 | ……。 | ||
直人 | 091 | 悠の時みたいに、ストレスのせいで発作を起こしたり、苦しんだりするおまえを…俺は、見たくない。 | 虫の声が響く | |
■scene04 ■キッチン、薫と則夫 薫が茶碗洗いをしているところへ則夫がやってくる |
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則夫 | 092 | お疲れ様、薫。 | 遠くで食堂のドアが開く音 則夫が近づく足音 |
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薫 | 093 | もうシャワー入ってきたの? | ||
則夫 | 094 | うん、茶碗洗い手伝おうか? | ||
薫 | 095 | 助かる、ありがと。 | ||
則夫 | 096 | 今日の夕ご飯、美味しかったよ。 | ||
薫 | 097 | ありがとう…ずっと母さんと二人暮らしだったから、料理は慣れてるんだ。 | ||
則夫 | 098 | へぇー、そうだったんだ。 | ||
薫 | 099 | 則夫 | ||
則夫 | 100 | ん? | ||
薫 | 101 | 直人となんかあったの? | ||
則夫 | 102 | 別に…なんにもないよ | ||
薫 | 103 | だって、昼間、二人ともおかしかったし。喧嘩でもしたの? | ||
則夫 | 104 | してないってば。 | ||
薫 | 105 | (食器を洗う手を止めて) 泣きそうな顔してるよ。 |
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則夫 | 106 | え… | ||
薫 | 107 | 今日ずっと、則夫は何か我慢をして、泣きそうな顔してた。 | ||
薫 | 108 | 僕でよかったら相談にのるよ。頼りないかもしれないけど(笑) | ||
則夫 | 109 | 頼りないなんて、そんな事ない。 | ||
薫 | 110 | (再び食器を洗い) 則夫は悠って子と仲が良かったんでしょ? |
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則夫 | 111 | うん、いつも一緒に居たし、二人で色んな事を話してた。 好きな音楽の事や面白かった小説の話、勉強の相談や友達のうわさ話も。 |
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薫 | 112 | 好きな人の話も? | ||
則夫 | 113 | そうだね、悠も僕も好きな人に片思いしてたから、二人で好きな人の話ばかりしてたな〜 (思いだして懐かしむ感じで。) |
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薫 | 114 | 則夫が好きなのは…直人? | ||
則夫 | 115 | クス、気づいちゃった?(あははって感じです) | ||
薫 | 116 | 直人の話をしてるときっていつも嬉しそうだったから…そうかなって。 | ||
則夫 | 117 | そっか…そうだよね…好きな人の事を思うと、ついつい頬が緩んじゃうよね…。 でも…(次第に元気がなくなり |
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薫 | 118 | でも? | ||
則夫 | 119 | (食器を洗う手をとめて) でももう僕、直人に嫌われたと思う。好きな人にしちゃいけない事をしちゃって… だから…もう駄目なんだ… |
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薫 | 120 | しちゃいけない事って? | ||
則夫 | 121 | 無理矢理…相手のいやがる事をさせちゃって…(泣きそうです) | ||
薫 | 122 | 直人はなんて? | ||
則夫 | 123 | その後は、何も言ってこないけど…でも絶対嫌われたと思う。…僕のした行為は最低だから… (まだ泣くのを堪えてます |
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薫 | 124 | …(溜息をつき)そか…。 | ||
則夫 | 125 | ねぇ、薫。 どうして人って……誰かを好きになるんだろうね(泣きそうで堪えてます) |
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則夫 | 126 | 想えば想う程、相手との温度差に傷ついて… それでも好きにならずにはいられなくて…(まだまだ堪えてます) |
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則夫 | 127 | すごく、苦しいんだ…!自分勝手な想いで、好きな人を思い遣る事もできないけど… | ||
則夫 | 128 | 誰より…直人が好きなんだ、どうしようもない位…好きなんだ…!! (すすり泣きしながら言い放ちます) |
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薫 | 129 | 則夫… | ||
則夫 | 130 | ひっく…うっ…(3〜5秒位すすり泣いて下さい) | ||
薫 | 131 | のり…お、きっと大丈夫だって、泣くなよ、な。 | ||
則夫 | 132 | …うっ…うう…ごめんね…突然こんな話し、しちゃって… (まだすすり泣いていますがこの台詞以降は次第に落ち着いていきます) |
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薫 | 133 | 謝らないでよ、話してって言ったのは僕の方だから。 | ||
則夫 | 134 | ううん… ずっと一人で不安な気持ちを抱えてて…ずっと誰かに聞いてもらいたくて…ずっと我慢してて… ……こうして薫に聞いてもらえてだいぶ楽になったよ。 |
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薫 | 135 | よかった…。 悠みたいに心の支えにはなれないかもしれないけど、僕でよかったらいつでも聞き役になるからさ。 |
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則夫 | 136 | (微笑んで)君は悠じゃないし、僕は君と、薫と話せてよかったと思ってる。 | ||
則夫 | 137 | ありがとう…薫。 | ||
■scene05 ■則夫のモノローグ |
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則夫M | 138 | 結局直人は…翌日から今まで通り何もなかったように僕に接してくれた。 | BGMin | |
則夫M | 139 | 僕も気持ちを抑えながら直人と同じように普通に振る舞った。 | ||
則夫M | 140 | 僕等の中で何かが変わっていくのを感じながら、ぎこちなく、なんとかバランスを保ち、 このまま夏休みは平凡に終わるものだと思っていた。 |
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則夫M | 141 | あの日の朝が、来るまでは。 | ||
■scene06 ■朝の食堂 直人が朝食の支度をしているところへ、則夫が食堂へ駆け込んでくる。 |
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直人 | 142 | おはよう則夫(冷静に) | 鳥の声 則夫の足音が近づいてくる 食堂のドアを開ける音 |
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則夫 | 143 | (走って来たので軽く息をきって下さい) 直人…、ねぇ、薫と和彦が居ないけど、どうして?(不安そうに) |
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直人 | 144 | 夕べ薫の母親が死んだのさ。(淡々と冷静に) | ||
則夫 | 145 | え? | ||
直人 | 146 | 遅くに電話で連絡があって、始発の電車で家へ帰ったんだ。 | ||
則夫 | 147 | 和彦は? | ||
直人 | 148 | …和彦にも今朝事情を話したら、薫の後を追って、行ってしまった…。 | ||
則夫 | 149 | そんな…僕、昨日の夜は遅くまで起きていたけど電話の音はしなかったよ。 | ||
直人 | 150 | 薫が取ったんだ。 | ||
則夫 | 151 | ほんとに?ねぇ直人、何か隠してない? | ||
直人 | 152 | 隠すって何を?(イラっとして) | ||
則夫 | 153 | 薫が来てから直人は今まで以上に和彦に対して気を遣ってて、僕は気づいてたよ… 表面上は平静を装ってたけど、直人は薫が気に入らないんでしょ? |
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則夫 | 154 | …直人…御願いだから僕には本当の事を話してくれない…?。 | ||
直人 | 155 | (溜息をつき) …ああ、気に入らないさ…… おまえがね。 |
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則夫 | 156 | …え… | ||
直人 | 157 | 鬱陶しいんだよ、俺の事をわかったような振りをして…うろつき回って。(則夫に近づき) (不機嫌な怖い声で則夫の耳元で言います) 愛されない愛されないっておねだりばかりで、今度は何が欲しいんだ…? またキスして欲しいのか?それともキス以上の事? |
157と158の台詞は混ぜて編集します。 | |
則夫 | 158 | …直人…ぇっ!?…やっ…!んんっ(無理矢理キス)…ぁ…、直人っ! やめてっ…やだっ…なおと…!やだ、こんなのやだよっ!(則夫が直人を突き飛ばします) …はぁ……はぁ…はぁ…はぁ…(一悶着合った後の緊張した息づかいを5秒くらい下さい) ……!(部屋を出て行くので立ち上がって駆け出す感じの息づかいを下さい) |
椅子が倒れる音 | |
直人 | 159 | (少し間をおきます)……(大きく息を吐き)頼むから、俺を嫌いになってくれ。 (則夫が部屋から出て行く効果音を入れます) …その方が、よっぽどましだ。 |
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■scene07 ■薫の母のアトリエ 薫ふさぎ込んでいるところへ和彦がやってくる。 |
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和彦 | 160 | (和彦が薫の母親の部屋にたどり着き、開いているドアの前に立って壁をノックする。) 薫。 |
蝉の声 和彦が歩いている音 壁をノックする音 |
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薫 | 161 | 和彦…どうしてここに? | ||
和彦 | 162 | 直人からわけを聞いて、心配で来てみたんだ(優しく) | ||
和彦 | 163 | (部屋に入り歩きながら周りを見て) ここが君の母さんのアトリエ? |
足音 | |
薫 | 164 | うん、母さんは画家で、ここで絵を描いてた…でもここも売られてしまうんだ…。 | ||
和彦 | 165 | そっか…。 | ||
薫 | 166 | ここにはいつも明るい陽が差してきていて、僕は母さんと二人きっりで暮してた。 | ||
和彦 | 167 | (薫に近寄り) 思い出がたくさんあるんだね、話して聞かせてよ。 |
足音 | |
薫 | 168 | 同情してくれるの? | ||
和彦 | 169 | ああ、君がそれで楽になれるのなら。 | ||
薫 | 170 | …君らしくない台詞だね。 | ||
和彦 | 171 | フフ(苦笑)確かに僕らしくないね。 | ||
薫 | 172 | (BGMが入ってから間を持って)和彦、君の両親はどんな人なの? | BGMin | |
和彦 | 173 | 僕は両親の事をほとんど覚えていない。 | ||
薫 | 174 | どうして? | ||
和彦 | 175 | 僕が小さい頃、家族で出かけた車が事故にあって、二人とも死んでしまったんだ。 | ||
和彦 | 176 | 残された僕は親戚の家で育てて貰ったんだけど… お世辞にもあまり居心地のいいところとは言えなくてね…(苦笑) |
||
和彦 | 177 | 学院の寮に入る事が出来て本当に良かったと思ってるんだ。 | ||
薫 | 178 | そっか…。 | ||
和彦 | 179 | だから僕はたった一人で、家族も帰るところも無い。 | ||
薫 | 180 | そんな事ないよ、直人だって君を支えてくれているし。 | ||
和彦 | 181 | いや、一人でいいんだ。 | ||
薫 | 182 | …え… | ||
和彦 | 183 | 大切な人が増えると失う時の悲しみも増える。 だから僕には何も必要ないし、何も求めちゃいけない。ずっとそう思ってた。でも… |
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薫 | 184 | でも? | ||
和彦 | 185 | 君の事が気になるんだ、薫。だから僕はこうしてここへやってきた。 | ||
薫 | 186 | 和彦… | ||
和彦 | 187 | 今日は…一緒に君の母さんの追悼をしたい。君一人だけに悲しい思いをさせたくない。 | ||
薫 | 188 | 今夜はずっと傍にいてくれるの? | ||
和彦 | 189 | ああ、一晩中話そうよ。話して、泣いて、早く母さんの事を思い出にしてしまうんだ。 | ||
薫 | 190 | (和彦に抱きつく) 和彦… |
衣擦れの音 | BGMF.O. |
■scene08 ■帰り道に見た夢 このシーンは夢の中なので全体的にエフェクトをかけます。 |
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悠 | 191 | おめでとう、和彦 | 鳥の声 | せつないピアノin |
和彦 | 192 | 悠…その花束は…?(不機嫌そうに | ||
悠 | 193 | 作品展で賞を取ったんでしょ、これお祝いに… (花束を渡す) |
花束を渡す音 | |
和彦 | 194 | 白い花か…まるで葬式の花だっ(投げ捨てるように吐き捨てて下さい) | 花束を投げつける音 | |
悠 | 195 | あっ… | ||
和彦 | 196 | 悠、もう君と二人っきりで会うのはよそうと言ったはずだ | ||
悠 | 197 | でも…僕は | ||
和彦 | 198 | 何度も言ってるだろ、迷惑なんだ。(憎しみをこめて) | ||
悠 | 199 | 和彦… | ||
和彦 | 200 | (ここから現実です) 薫… |
バスの車内の音 | ふわふわ終わる |
薫 | 201 | ん…んん… | ||
和彦 | 202 | 薫、起きて、薫。 | ||
薫 | 203 | …和彦…ここは… | ||
和彦 | 204 | バスの中、もうすぐ学院に着くよ。 | ||
薫 | 205 | そっか…さっきのは…夢か…。 | ||
和彦 | 206 | 疲れた?夕べはほとんど寝ないで起きていたからね…(クスリと笑い)荷物持とうか? | ||
薫 | 207 | ううん…大丈夫 | ||
和彦 | 208 | どうしたの顔色が悪いけど? | ||
薫 | 209 | いや、なんでもない。本当に大丈夫…。 | ||
■scene09 ■学院の玄関 玄関前に座り込んでいる直人の元へ、和彦と薫が帰ってくる |
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薫 | …ねぇ和彦…あれ… | 蝉の声 和彦と薫が草を踏んで歩く足音 |
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和彦 | 210 | ん? | ||
薫 | 211 | 玄関の前に座り込んでるの、直人じゃない? | ||
和彦 | 212 | ほんとだ…どうしたんだろう…なおとー!(遠くへ呼びかけるように。) | 二人足早に駆け寄る足音 | |
薫 | 213 | 直人…どうしたの? | ||
直人 | 214 | …お帰り(生気がなく) | ||
和彦 | 215 | 何かあったの?則夫は? | ||
直人 | 216 | (溜息をつき) 夕べから図書準備室に籠もったきり、出てこない。 |
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薫 | 217 | どうして? | ||
直人 | 218 | 俺が…あいつを傷つけた。 | ||
和彦 | 傷つけたって…どういう事? | |||
薫 | 219 | 僕、則夫と話してくる…! (薫駆け出す) |
走り出す音 | |
和彦 | 220 | ねぇ直人、君らしくないよ、昨日一体何が…? | ||
直人 | 221 | …感情にまかせて、則夫に酷いこともしてしまった… もう俺達の関係は、お終いだよ。 (自嘲気味に)監督生、失格だ。 |
||
和彦 | 222 | 何言ってるんだよ、君はいつだって僕等を助けてくれて、立派に責務を果しているじゃないか。 | ||
直人 | 223 | かずひこ… | ||
和彦 | 224 | ほら、僕等も行こう、直人、立って。 | ||
■scene10 ■図書準備室 則夫が一人出居る |
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薫 | 225 | (ドアをどんどんたたき) 則夫、僕だよ、薫だよ。 |
どんどん | |
則夫 | 226 | …薫(はっとして) | ||
薫 | 227 | こんなところに籠もってないで、出ておいでよ。 | どんどん | |
則夫 | 228 | …薫!帰って来たの? | ||
薫 | 229 | うん、和彦も直人ももうすぐ来るよ、ね、ほら開けてよ則夫! | ||
則夫 | 230 | なおと…も?(どきっとして) | ||
薫 | 231 | うん、とにかくここを開けて!ちゃんと顔を見て話をしよう。 | ||
則夫 | 232 | うん……わかった。(意を決してドアを開ける) | がらがらとドアが開く音 | |
薫 | 233 | 則夫…よかった、心配したよ。一体何があった… | ||
則夫 | 234 | (前の台詞にかぶせます)薫、これ、受け取って。 | ||
薫 | 235 | え…?(突然の事に驚き) | 紙の音 | |
則夫 | 236 | 偶然見つけたんだ、悠が最後に借りた本の間から出てきた。 | ||
薫 | 237 | これって… | ||
則夫 | 238 | 僕、ずっと探してたんだ。悠の最後の手紙。どうしても君に読んで欲しいんだ。 | ||
薫 | 239 | どうして…? | ||
則夫 | 240 | 僕は、君が悠と他人だとは思えない。 | ||
薫 | 241 | 則夫…だから僕は… | 直人と和彦が駆け寄る足音 | |
直人 | 242 | 則夫…!(駆け寄る) | ||
則夫 | 243 | 心配かけて、ごめんなさい。 | ||
直人 | 244 | いや悪いのは俺だ。 感情を抑えきれず、酷いことをしてしまって…昨日は本当にすまなかった。 |
||
則夫 | 245 | ううん、僕が悪かったんだ。 直人を嫌な気分にさせてしまったし、僕、これ以上嫌われるのが怖くて… |
||
和彦 | 246 | 則夫、直人はとても則夫の事を心配してたんだよ。 | ||
則夫 | 247 | ほんとに…? | ||
直人 | 248 | ああ、心配だった。あんな事を言って…ずっと後悔していた。 | ||
則夫 | 249 | 僕だって…無理矢理…… | ||
直人 | 250 | もういいよ、俺もおまえもお互い様だ。仲直りしよう。 | ||
則夫 | 251 | 直人…(ほっとして) | ||
薫 | 252 | (手紙をポケットに仕舞い込み) フフ、あーあ!安心したらおなか空いた!今日の食事当番、誰だっけ? |
手紙をしまう音 | |
和彦 | 253 | あ、僕だ。 | ||
薫 | 254 | じゃあなんか作ってよ、丁度お昼ご飯の時間でしょ?ね。 | ||
和彦 | 255 | 薫も手伝ってくれる? | ||
薫 | 256 | 仕方ないな〜どうしてもって言うなら手伝ってあげる。 | ||
和彦 | 257 | フフ(鼻で笑い)僕、料理へただから頼んだよ。 | ここから↓薫と和彦の台詞 F.Oします |
|
薫 | 258 | え〜、僕は手伝うだけだからね。当番は和彦だろ? | ||
和彦 | 259 | ああ、わかってる。 | ||
薫 | 260 | ほんとに?僕に全部やらせようとしてない? | ||
和彦 | 261 | 大丈夫、ちゃんとやるさ。 | ||
薫 | 262 | ほんとかな〜。 | ||
則夫 | 263 | かずひこが……変わった。 | ||
直人 | 264 | おまえもそう思うか。 | ||
則夫 | 265 | …きっと薫が、和彦を変えたんだ。(静かに嬉しそうに) | ||
直人 | 266 | いや違う、薫じゃない。 | ||
則夫 | 267 | え? | ||
直人 | 268 | 悠さ…悠が変えたんだ。(嫉妬心) | ||
則夫 | 269 | …なおと?(不思議そうに) | 雨の音、F.I | |
■scene11 ■悠の最後の手紙 玄関前のホール、一人で手紙を読んでいる薫 |
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薫 | 270 | 多分、この手紙を君が読む事はないだろう。 | 風の音 ばけつに雨漏りの滴が落ちる音 |
ピアノin |
悠 | 271 | 多分、この手紙を君が読む事は無いだろう。きっと破られて、捨てられてしまうことだろう。 | ||
悠 | 272 | でも僕は書かずにはいられない。僕の最期の言葉だから。誰も読まなくていい。その方がいい。 | ||
悠 | 273 | 何かに向かって、語りたいだけなのだから。 | 草むらの中を歩く音 | |
悠 | 274 | 僕は、僕のこの君へ気持ちが、何か値打ちのあるものだなんて考えているわけじゃない。 | ||
悠 | 275 | だけどこの感情は、透明で、静かなもので、決して消えないものだという事は知っている。 | ||
悠 | 276 | …君が、僕の事を忘れないでいてくれるのなら僕は、この体が無くなってしまおうとも構わない。 だから僕は飛ぶ、君に向かって。 |
立ち止まる音 | |
悠 | 277 | もし君が、この手紙を読む事があるとすれば… | 強い風の音、環境音も全てC.O | |
悠 | 278 | 君は僕を許してくれるだろうか | ||
薫 | 279 | う…ううぅ… | 直人の近寄る足音 | |
直人 | 280 | (こつこつと足音を立てて近づきます) どうして泣いてるんだ。 (ここから直人が黒い部分が出てきますので丁寧に静かに怖く御願いします |
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薫 | 281 | 悠の為だよ。 | ||
直人 | 282 | 今更…。 | ||
薫 | 283 | …え。 | ||
直人 | 284 | 見せろよ、その手紙(手紙を奪い取る) | 紙の音 | |
薫 | 285 | あ… | ||
直人 | 286 | フッ(鼻で笑い) やっぱり…そういう事か。 |
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薫 | 287 | どういう意味…? | ||
直人 | 288 | 薫… | ||
直人 | 289 | おまえは悠だ(冷静に言い放つ) | 雨音が強くなる |