[ 記憶再生-Summer vacation of 1999- ] | ||||
第一話 回帰 | ||||
cast | 番号 | 台詞・情景 | 効果 | BGM |
■scene01 ■悠の死 |
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悠 | 001 | 多分、この手紙を君が読む事は無いだろう。 きっと破られて、捨てられてしまうことだろう。 でも僕は書かずにはいられない。 僕の最期の言葉だから。誰も読まなくていい。その方がいい。 何かに向かって、語りたいだけなのだから。 |
風の音、夜の森、虫の声 草むらをかき分けて歩く音 |
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悠 | 002 | 僕は、僕のこの君へ気持ちが、何か値打ちのあるものだなんて考えているわけじゃない。 だけどこの感情は、透明で、静かなもので、決して消えないものだという事は知っている。 |
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悠 | 003 | もし君が、この手紙を読む事があるとすれば… | 立ち止まる音 | |
悠 | 004 | 君は僕を許してくれるだろうか | 強い風の音、環境音も全てC.O. | |
柱時計が12時を知らせる音、ぼーんぼーん途中室内で聞こえる効果に切り替え | ||||
直人 | 005 | ん…う〜ん…ん…(寝ぼけ気味に、和彦がレポートを書いているのに気がついて)…あれ…? | すきま風の音 和彦が教科書のページをめくる音、鉛筆で文字を書く音。 直人がベッドの中でもぞもぞと動く衣擦れの音 |
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和彦 | 006 | ごめん、直人。起こしちゃった? | ||
直人 | 007 | …んん…(まだ寝ぼけ気味に)…和彦、まだ起きてたの? | ||
和彦 | 008 | ああ。明日提出する課題をまとめてて…。 | ||
直人 | 009 | そっか…はぁ〜なんだか今夜は冷えるな… | ||
和彦 | 010 | うん、まだ五月だし…肌寒いね | ||
和彦 | 011 | (一息つき)もう12時過ぎてるし…そろそろ寝ようかな。 | ||
直人 | 012 | 課題は? | ||
和彦 | 013 | だいたい片付いたよ。後は授業前に少し手直しすれば大丈夫。 | ||
直人 | 014 | そっか。 | ||
和彦 | 015 | ああ。 | ||
和彦 | 016 | 電気、消すよ? | 和彦、立ち上がり歩く音 | |
直人 | 017 | うん | ||
和彦 | 018 | (ドアの下の隙間に挟まった手紙を見つける)あれ… | ||
直人 | 019 | どうした? | ||
和彦 | 020 | いや…ドアの下の隙間に、手紙が… | ドアの下から手紙を引き出す音 | |
直人 | 021 | ラブレター?(からかい気味に) | ||
和彦 | 022 | はぁ…(溜息)くだらない。(読みもせず机の引き出しにしまう) | 引き出しの中で鈴の音が鳴る | |
直人 | 023 | また悠から? | ||
和彦 | 024 | さぁ、どうでもいい。電気消すね。 | 和彦、電気を消す音 | |
直人 | 025 | おやすみ、和彦。 | 直人が布団をかぶる衣擦れの音 | |
和彦 | 026 | おやすみ、直人。 | 和彦が歩いてベッドに入り、 布団をかぶる衣擦れの音 |
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則夫M | 027 | その日。(一呼吸置いて下さい)僕のクラスメイトだった悠は、学院の裏山にある崖から、 湖に身を投げた。 |
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則夫M | 028 | 悠は内気で、友人達の後ろからそっと後(あと)をついてくるような、物静かな少年だった。 | 「記憶再生」テーマ in |
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則夫M | 029 | 悠が自殺した原因は和彦にふられたからだと一部の下級生の間で噂になっていたけれど… | ||
則夫M | 030 | 数ヶ月もしないうちにみんな悠の事を忘れ、忙しい日々に移ろい、誰も彼の名を口にしなくなった。 | ||
則夫M | 031 | 悠は、”永遠に眠り続ける為に湖の底を選んだのだ”と、直人は言っていたけれど、 僕は悠がいつか帰って来るって信じていた。 |
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■scene02 ■オープニング |
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ナレ | 032 | 今でも夏の終わりが近づき、蝉が最期の力を振り絞って啼く季節になると想い出す | ||
ナレ | 033 | 一つ また一つと年を重ねてゆくたびに 心も大人になっていくのだと思っていたあの頃 | ||
ナレ | 034 | 永遠に辿りつけない 終わり。…終わりの始まり | ||
ナレ | 035 | ボイスドラマ 記憶再生 Summer vacation of 1999 | ||
直人TC | 036 | 第一話 回帰 | 「記憶再生」テーマ out |
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■scene03 ■終業式が終わった後の校舎玄関 このシーンの直人と和彦は基本的に優しく則夫を見守るような感じで終始笑顔です。 |
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則夫 | 037 | みんな…家へ帰ってしまった(つまらなそうに) | 環境音屋外、蝉の声 | |
直人 | 038 | 駅へ行くバスの最終便も行っちまったしな。今日から3人だけの夏休みってわけだ。 帰るところの無いもの同士のね。 |
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則夫 | 039 | 3人だけじゃ、つまらないよ、あ〜あ。 | ||
和彦 | 040 | 則夫は寂しがりやだな(優しく微笑み) | ||
則夫 | 041 | 別に…!寂しいわけじゃないけど… | ||
直人 | 042 | 今年寮に残った2年生は則夫だけだからな。 | ||
則夫 | 043 | 何その言い方、いきなりのけ者扱いだね(拗ねて) | ||
直人 | 044 | ごめんごめん、そんなつもりはないよ(微笑み) | ||
則夫 | 045 | いいよ別に否定しなくても。直人と和彦は学年も一緒で、寮も同じ部屋で、2年生は僕だけ。 紛れもない事実でしょ。 |
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和彦 | 046 | でも食事も学習時間も三人一緒なんだし、学年は関係ないさ | ||
則夫 | 047 | わかってるよ…でも… | ||
和彦 | 048 | でも? | ||
則夫 | 049 | ううん、なんでもない。(気持ちを切り替え)僕、ちょっと散歩に行ってくる | ||
和彦 | 050 | え?何処へ…(直人に遮られる) | ||
直人 | 051 | (和彦を遮って)わかった、行ってこいよ | ||
則夫 | 052 | うん、じゃあ先に寮に戻ってて。 | ||
直人 | 053 | ああ、気をつけてな | 則夫が走り去る音 | |
和彦 | 054 | 直人、則夫は何処へ…? | ||
直人 | 055 | いつもの場所さ | ||
和彦 | 056 | いつもの場所って…? | 「湖畔」in | |
直人 | 057 | 悠が死んだ崖だよ。 | ||
■scene04 ■悠が死んだ崖 則夫、崖っぷちに立ち湖の底を覗いている |
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則夫 | 058 | 僕はいつか…君が帰ってくるって信じてるよ(自分に言い聞かせるように) | 環境音、森、鳶の声 | |
直人 | 059 | 則夫(10mぐらい離れた背後から声をかける) | ||
則夫 | 060 | (振り返って)直人か… | 直人近寄ってくる足音 | |
直人 | 061 | いつもこの崖に一人で来てるだろ | ||
則夫 | 062 | うん、どうして知ってるの? | ||
直人 | 063 | 学校が終わった後、則夫が毎日裏山に向かう姿を見て、きっとここだろうと思ってた。 | ||
則夫 | 064 | そっか…和彦は? | ||
直人 | 065 | 先に寮に戻ってるって。 | ||
則夫 | 066 | 本当は真っ先にここに来なくちゃいけないのに…。 | ||
直人 | 067 | 則夫、悠が死んだのは事故だ。自殺じゃないし、和彦も関係無い。 | ||
則夫 | 068 | 本当にそう思ってるの? | ||
直人 | 069 | ああ、祈ろう一緒に。 | 「湖畔」out | |
則夫 | 070 | ねえ、直人 | ||
直人 | 071 | ん? | ||
則夫 | 072 | 悠が居なくなった日、和彦は悠から何か受け取ってなかった? | ||
直人 | 073 | …さぁ…(少し考えて、手紙の事を思い出すが…)覚えてないな。 | ||
則夫 | 074 | ほんとに? | ||
直人 | 075 | ああ、覚えてない。 | ||
■scene05 ■則夫のモノローグ |
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則夫M | 076 | 僕は悠の死を認めたくなかった。 | 「則夫」in | |
則夫M | 077 | 悠は和彦を愛していたし、たとえ和彦にふられたからと言って、その事を理由に 自殺してしまうような人とは思えなかった。 |
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則夫M | 078 | 何故悠はあの晩、湖に身を投げたのか。 | ||
則夫M | 079 | 悠が居なくなって3ヶ月、僕と直人と和彦は…3人だけの夏休みを迎えていた。 | ||
■scene06 ■夕方の教室、和彦と則夫が自習している |
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則夫 | 080 | あ〜、疲れたー。夏休み中の学習プログラムって誰が組んだの? | カラスの声 コンピュータの作動音 キーをたたく音 |
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和彦 | 081 | 学年主任の先生がちゃんと作っておいてくれたんだよ | ||
則夫 | 082 | はぁ〜(溜息)これ、夏休み中に全部終わるかなぁ…。 | ||
直人 | 083 | もう4時か、そろそろ夕食作らないと…(席を立ち上がり) | 椅子をひく音 | |
和彦 | 084 | 今日は直人が食事当番だね | ||
則夫 | 085 | 明日は僕?だよね…ちゃんと作れるかな… | ||
和彦 | 086 | 大丈夫だよ、レシピもあるし。 | ||
直人 | 087 | 和彦、じゃあ後頼む。 | コンピュータからディスクを抜く音 立ち上がり廊下へ向かう足音 |
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和彦 | 088 | ああ、適当な時間になったらそっち行くよ。 | 扉の音 | 「輪転」F.I. |
則夫 | 089 | はぁ…(溜息)困ったなぁ。 | キーをたたく音 | |
和彦 | 090 | どうしたの? | ||
則夫 | 091 | 課題の小論文、参考文献もまだ決めてなくて。 | ||
和彦 | 092 | テーマは? | ||
則夫 | 093 | 「生と死」について | ||
和彦 | 094 | ……難しいテーマだね。 | ||
則夫 | 095 | うん、「生と死」って言っても、ソウルメイトや輪廻転生の方に絞ってまとめようと思ってるんだけど…うーん。 | ||
和彦 | 096 | そう言えば…確か直人が去年提出した小論文のテーマが、そんな感じの内容で…(しどろもどろ) | ||
則夫 | 097 | (和彦の台詞にかぶせます)ねぇ和彦は輪廻転生って信じる? | ||
和彦 | 098 | いや…僕はあまり… | ||
則夫 | 099 | じゃあ人は死んだらどうなるの? | ||
和彦 | 100 | 死んだら…死んだらそれでお終い…じゃないかな。(気まずそうに) | ||
則夫 | 101 | そうかな、志半ばで死んじゃった人の想いって、そう簡単に消えてしまうものかな? | ||
和彦 | 102 | 肉体は滅びても、想いが残るってやつ?残留思念だっけ?(もっと気まずそうに) | ||
則夫 | 103 | ううん、そうじゃなくて…………僕が言いたいのは、僕の想いが… | ||
<<回想>> | ||||
悠 | 104 | (途中から則夫の声と重なり効果をつけて)僕が言いたいのは、僕の想いが、 何か特別なものだなんて思っているわけじゃない。 |
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悠 | 105 | 君がもし自分の殻を破って誰かを愛する事ができるようになるのだとすれば、僕は自分の体が 無くなってしまおうとも構わない。だから僕は飛ぶ、君に向かって。 |
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和彦 | 106 | ………悠……(見透かされて悔しそうに呟く感じで) | 「輪転」out | |
<<回想終わり>> | ||||
則夫 | 107 | だから僕は信じてるんだ、悠がいつか、”帰ってくる”って。 | ||
則夫 | 108 | ねぇ、和彦?聴いてる? | ||
和彦 | 109 | (ハっとして)え!? | ||
則夫 | 110 | んー(むくれた声で)、もういいよ。 | コンピュータからディスクを抜く音 | |
和彦 | 111 | ごめん、ちょっと別の事を考えてて… | ||
則夫 | 112 | 僕、直人のとこ行って食事作るの手伝ってくる(立ち上がり、足早に立ち去る) | 立ち上がる音、立ち去る足音 | |
和彦 | 113 | …あ…うん… | コンピュータからディスクを抜く音) | |
雨の音 F.I. | ||||
■scene07 ■食堂 食事を終えた後、則夫はシャワーを浴びに行って居ない。直人は椅子に腰掛け今日作った食事のレシピを読んでいる。 シンクで皿を洗っている和彦。 |
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<直人サイドでの効果をつけるので、和彦の声を小さめに編集します> | 和彦が皿を洗っている音、 雨の音、次第に大きくなる |
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直人 | 114 | (レシピを見ながら)そっか〜、砂糖は大さじ4だったのか…多分、小さじで4杯入れたよなぁ… だからあんまり美味しくなかったのかな…(独り言です) |
紙ペラ音 | 「想い」in |
直人 | 115 | 和彦、今日俺が作った夕飯だけどー(普通の声で遠くの人に言う感じで) | ||
和彦 | 116 | なにー?ごめん、水の音でよく聞こえない。(皿を洗いながら遠くに言うように | ||
直人 | 117 | 今日の夕飯さー、砂糖の量を間違えてたみたいでー(大きな声で遠くの人に言うような感じ) | ||
和彦 | 118 | えー?(遠くの人に聞き返すように) | ||
直人 | 119 | ふふ…(鼻で笑い)ま、いっか(やりとりが可笑しくなり微笑みながら) | ||
直人 | 120 | 則夫がシャワーから戻ってきたら聞いてみようかな…(独り言です) | 強くなる雨の音 | 「想い」out |
直人 | 121 | あれ…雨か。(直人立ち上がり、窓を開ける)わぁ…結構雨脚(あまあし)が強いな。 | シンクの方からガタンと大きな音 | |
直人 | 122 | (大きな音に気づき)和彦? | 足早に直人が駆け寄る音 | |
直人 | 123 | 和彦、どうした?(多少緊迫) | ||
和彦 | 124 | (息をするのが辛そうに) …ん…んん…大丈夫…いつもの…だよ… |
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直人 | 125 | (緊迫して)和彦、おい、しっかりしろ | ||
和彦 | 126 | (直人の台詞の間分3〜5秒ぐらい苦しそうな呼吸をした後、苦しそうに) 久しぶりに…胸が…んっ…はぁ…くる…し… |
衣擦れの音など | |
直人 | 127 | いいから喋るな、ゆっくり呼吸して… | ||
和彦 | 128 | (直人の台詞の間分3〜5秒ぐらい苦しそうな呼吸をした後、苦しそうに) ぁ…ん…はぁ…息が……はぁはぁ…… |
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直人 | 129 | 馬鹿、ちゃんと目を開けろ、和彦、おい、和彦! | ||
和彦 | 130 | (直人の台詞の間分3秒ぐらい苦しそうな呼吸をした後、苦しそうに) …なお…と…っはぁ……たす…け…て…んっん…はぁ(大きく息を吸い止めて) |
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直人 | 131 | 和彦、和彦!クソぅ!…何やってんだよ…はぁーっ…んっ (人工呼吸をします) |
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直人 | 132 | はぁーっ…んっーっぷはー×3 (息づかいにこだわりはありませんので人工呼吸っぽく聞こえる息づかいを3回下さい) |
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則夫 | 133 | ただいー……っ…!(驚いて声が出ない息声です) | 食堂のドアが開く音 | |
和彦 | 134 | ぷは〜(大きく息を吐いて下さい)なお…と…? | ||
直人 | 135 | ……はぁ〜(大きく息を吸ってから溜息をつく) | ||
則夫 | 136 | ……なおと…(二人に聞こえない、小さな声) | ドアを閉める音 | |
直人 | 137 | 大丈夫か?起き上がれるか? | ||
和彦 | 138 | うん…ごめん(もう一度深呼吸、大きく息を吐き)もう、大丈夫だよ。 | ||
直人 | 139 | 発作、久しぶりだったな。 | ||
和彦 | 140 | うん。ストレスが溜まってると、駄目なんだろうね、特にこんな雨の日の夜は…。 両親と事故にあった日の事を思い出して…呼吸が出来なくなってしまう。 |
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直人 | 141 | 三ヶ月以上無かったから、だいぶよくなったと思ってた。 人工呼吸も、久しぶりにしたしな(苦笑しながら) |
「則夫」F.I. | |
和彦 | 142 | ごめん、直人にはいつも迷惑をかけてばかりだ。 | ||
直人 | 143 | いや、いいさ、則夫が居ない時で良かった、あいつが見たら心配するだろうし。 | ||
和彦 | 144 | そうだね… | ||
直人 | 145 | そろそろ戻って来る頃だしな。皿洗い、続き俺がやるから、座ってろよ。 | ||
和彦 | 146 | …ありがとう。 | ||
■scene08 ■則夫のモノローグ |
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則夫M | 147 | 直人と和彦は特別な関係だと…僕はわかっていた。 | ||
148 | わかっていたけれど、僕の疎外感と孤独感は一層強まった。 | |||
149 | こんな時悠が居てくれたら…悠はなんて言っただろう。 | |||
■scene09 ■朝の食堂 雨の朝、則夫が食事当番で調理をしているところへ直人登場。 |
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直人 | 150 | おはよう、則夫 | 環境音、室内の雨 直人、近寄る足音 則夫、調理の音 |
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則夫 | 151 | おはよう、直人。(則夫は調理しながら喋っています) | 「則夫」out | |
直人 | 152 | 朝ご飯は何? | ||
則夫 | 153 | あんまり期待しないでよ(少し不満げに)食事当番なんて初めてなんだから。 | ||
直人 | 154 | なに怒ってるんだよ?食べられれば文句はないさ(からかいながら笑い) | ||
則夫 | 155 | 別に、怒ってないよ。(口をとがらせて)調理に集中してるだけ! | ||
直人 | 156 | そうカリカリするなって、俺も手伝うから。(則夫のそばに来てお湯を沸かす | やかんに水を入れ火をかける音 | |
則夫 | 157 | …うん…あれ、和彦は? | ||
直人 | 158 | 玄関の雨漏りがどうなったか見に行ったよ。 | ||
則夫 | 159 | …そっか。(調理の手を止め)はぁ…雨かぁ…。 | ||
直人 | 160 | …ん?どうした? | ||
則夫 | 161 | あの日も…悠が居なくなった日も…こんな朝だったなって、思い出しちゃって。 | ||
直人 | 162 | (ため息一つ、不機嫌になり)…もう忘れろよ。 | ||
則夫 | 163 | どうして?(不満げに) | ||
直人 | 164 | 和彦が気にする。 | ||
則夫 | 165 | 直人はそうやって、いつも和彦の心配ばかりして…。 好きなんだもんね、和彦が。(再び調理を始める) |
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直人 | 166 | 馬鹿、違うよ。 | ||
則夫 | 167 | 隠さなくたっていいよ、下級生の間じゃもっぱらの噂だし、それに! | ||
直人 | 168 | それに? | ||
則夫 | 169 | (少し間を入れます)ううん…なんでもない。 | 水道の蛇口から水の流れる音 | |
■scene10 ■玄関 バケツを持ってきた和彦が、雨漏りの箇所を見つける |
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和彦 | 170 | …えっと…(きょろきょろと探しています) ん……あ、あった(雨漏りしてぬれている床を見つけ近寄ります) |
雨の音和彦が近づいて来る足音 | 「雨音」in |
和彦 | 171 | ここか…。 (バケツを置く) |
バケツを置く音 すぐに滴が落ちる音が響く |
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和彦 | 172 | よかった、水浸しにはなってなくて…(天井を見上げ一呼吸つき) 夏休みが終わったら、修繕してもらうよう報告しないと… |
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和彦 | 173 | (和彦が窓に向かって歩いて行き、立ち止まる音、二重になっている内側の窓を開ける音) 雨か…はぁ… (窓の外を眺めため息をついた後、玄関の外に誰か座り込んでいるのに気づき) あれ…? |
歩き、立ち止まる音 二重になっている内側の窓を開ける音 |
「雨音」out |
和彦 | 174 | (外側の窓も開けながら) 誰だ…?玄関の前に…人が…… (窓が開き雨の音が大きくなる) |
外側の窓開ける音 窓が開き雨の音が大きくなる |
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和彦 | 175 | (少し離れたところに居る少年に呼びかけるように) おいっ!君! (玄関前で体育座りしている少年は返事をしない) |
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和彦 | 176 | (慌てて窓を離れ、玄関のドアに近づき、歩きながら、独り言) おかしいな…夏休み中、他の生徒は寮に残ってるはずないのに… |
小走り、玄関のドアを開ける音 | |
和彦 | 177 | (和彦が玄関のドアを開けるとすぐ足下に座り込んでいる少年の姿が見え、話しかける) 君、座り込んでないで顔をあげて。何処のクラスの子? |
雨の音大きく | |
薫 | 178 | …え?(薫が顔を上げる) | ||
和彦 | 179 | (はっとして息そ飲み)君は…! | 「足音」F.I | |
薫 | 180 | 良かった〜!やっと開いた♪待ちくたびれたよ〜。 (ずかずかと入って行く) |
歩く音、玄関のドアが締まる音 | |
和彦 | 181 | (しげしげと薫を見つめ)…ゆう…じゃない? | ||
薫 | 182 | 悠?何のこと? | ||
和彦 | 183 | ごめん……そっくりなんだ。 | ||
薫 | 184 | 誰が? | ||
和彦 | 185 | 自殺した子と。 | ||
薫 | 186 | 僕が? | ||
和彦 | 187 | うん…悠という名前を知ってるか? | ||
薫 | 188 | 知らないよ!気持ち悪いなぁ、僕は薫って言うんだ。 | ||
和彦 | 189 | かおる…?君は一体…? | ||
薫 | 190 | 転入生さ!今朝の始発で駅について、玄関の屋根の下で一眠りしてたとこ。 | ||
和彦 | 191 | 今、夏休みだよ?先生の許可はちゃんと取ってるの? | ||
薫 | 192 | 気に入らないなぁ、君が監督生? | ||
和彦 | 193 | そうじゃないけど…。 | ||
薫 | 194 | …ふぅん。じゃあ君にそんな事聞く権利なんて無いだろ? | ||
和彦 | 195 | そうか…ごめん。 | 「足音」out | |
薫 | 196 | いいよ別に、和彦(悠の口調のように) | ||
和彦 | 197 | …!(息をのみゾっとして) 何故僕の名前を知っている…! |
||
薫 | 198 | (鼻で笑い)まぐれだよ、適当に言っただけ。 | ||
和彦 | 199 | 適当って…そんな… | ||
薫 | 200 | なんてね、冗談。夏休みの間寮に残ってる生徒の名前を、聞いてたんだ。 | ||
和彦 | 201 | え…? | ||
薫 | 202 | 監督生が霧島直人、もう一人の3年生は学年長の長門和彦、2年生は榛名則夫?だっけ。 | ||
和彦 | 203 | …あ、ああ。 | ||
薫 | 204 | 君が監督生じゃないなら、消去法で和彦か則夫だって思ったんだ。 これで僕がおばけじゃないってわかって安心した? |
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和彦 | 205 | いや…お化けだなんてそんな… | ||
薫 | 206 | いいから早く中に入れてよ…あれ、なんかいい匂いがする! | 薫の足音 | |
■scene11 食堂、薫登場 テーブルに皿を置いている則夫、直人は調理場でスープを盛りつけしている。 |
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薫 | 207 | うわー、やった〜いいタイミング、丁度朝ご飯だったんだ、ねぇ僕の分もある? | 食堂のドアが開く音 | |
則夫 | 208 | …………悠……!(驚きと少しの恐怖) | ||
薫 | 209 | あ……ええっと | ||
則夫 | 210 | 直人…!悠が…!(驚いて調理場へかけこむ) | 則夫の足音 | |
薫 | 211 | はぁ…お化けじゃないんだけどな、僕は…。 | 遅れて入ってくる和彦の足音 | |
和彦 | 212 | 仕方ないさ、君は悠と瓜二つだからね。 | ||
薫 | 213 | へ〜、そんなに似てるんだ、自殺した子と。(嫌みっぽく) | ||
和彦 | 214 | しゃべり方は全然違うけど、顔も声も、背格好もそっくりだよ。 | 直人と則夫の足音 | |
直人 | 215 | (キッチンから食堂へ出てきて) ……おまえは…(驚きを隠せません) |
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則夫 | 216 | (直人の後ろから顔を出し) …ゆうじゃ…ないの?(おそるおそる) |
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和彦 | 217 | 直人、彼は悠じゃない、転入生なんだ。薫だよ。えっと…(名字を聞いたっけ?と考えている) | ||
薫 | 218 | 陸奥薫だよ。君が監督生の直人? | ||
直人 | 219 | 新学期に転入生が来るとは聞いてたけど… | ||
薫 | 220 | それが僕さ。 | ||
直人 | 221 | おまえは…悠の… | ||
薫 | 222 | また悠か、そういう奴は兄弟にも親戚にも居ないんだ! | ||
薫 | 223 | 早く来たからって追い出したりはしないだろうね。 | ||
直人 | 224 | 問題はあるけど仕方ない。 | ||
薫 | 225 | 問題って?(不満げに) | ||
則夫 | 226 | 問題なんかないよ、和彦以外は。(少し意地悪に) | ||
和彦 | 227 | 別に…僕は… | ||
薫 | 228 | なにそれ? | ||
則夫 | 229 | 君にそっくりな悠って子が居て、悠は、和彦にふられて自殺したんだ。(真実だけを淡々と) | ||
直人 | 230 | 則夫!(怒る) | ||
則夫 | 231 | だって悠は!ずっとひたむきに和彦の事だけを想ってたのに、あんなにむげにするなんて… (少し強めに) |
||
直人 | 232 | それが悠の居なくなった理由とは限らないだろ(激怒ではなく、いらいらしながら) | ||
薫 | 233 | へ〜、そうなんだ(意味深に) | ||
和彦 | 234 | …部屋に戻ってるよ。(和彦立ち去ろうとして) | 和彦の足音 | |
薫 | 235 | ほんとに?殺したの? | ||
和彦 | 236 | …え?(足を止め) | 足を止める | |
薫 | 237 | だから、ほんとに君が殺したの?悠とか言う奴をさ(面白がって) | ||
和彦 | 238 | …違う!(歯を食いしばりながら静かに怒り) (和彦、ツカツカと薫に近寄りビンタ) |
和彦、ツカツカ、ビンタ音! | |
薫 | 239 | いった(痛)!…何するんだ!こいつっ! | ||
和彦 | 240 | っうぅ…はぁはぁ…っ!…ふんっ…はあっ!…んっ (5〜秒位、台詞は気にせずたたき合っているような息の荒い感じ声&息を下さい) |
和彦と薫とっくみあいの喧嘩 どたばた |
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薫 | 241 | っうぅ…えいっ…っく!……んっ…いった… (5〜秒位、たたき合っているような息の荒い感じ声&息を下さい) |
||
直人 | 242 | よせよ!(直人が和彦を抑え) | ||
則夫 | 243 | やめろよ!(則夫が薫を抑えて二人を引き離します) | ||
和彦 | 244 | はぁ…はぁ…はぁ…(荒い息からだんだん落ち着いた呼吸を5秒くらい下さい) | ||
薫 | 245 | 何だよ、はぁ…はぁ…ただの冗談だろ!いきなり殴るなんて! | ||
直人 | 246 | 悠の事は…おまえが言ったことは冗談じゃすまされない事なんだ。(厳しく冷静にしかるように) | ||
薫 | 247 | 悠、悠、悠って僕は悠じゃない、薫だよ…! | ||
和彦 | 248 | わかってる…わかってるよ。……悠はもう死んだんだ。(最後はきっぱりと言い切るように。) |